消費税法上、軽減税率となるのか?標準税率となるのか?よくわかりません。事例問題をまじえて解説します。(2)




事例問題5)
・食品だけがリストに載っているカタログギフトの販売は、軽減税率ですか?標準税率ですか?
・回答:標準税率です。
・解説:食品のみを取り扱うカタログギフトといえど、全体がサービスと考えますので、「役務の提供」と判断されます。よって、「役務の提供」は、軽減対象資産の譲渡等に該当せず、標準税率となります。なお、用途は税率の判定に影響しません。

事例問題6)
・パック旅行(2千円相当の食品のお土産付き)の販売は、軽減税率ですか?標準税率ですか?
・回答:全体が標準税率です。
・解説:事例問題5のカタログギフト同様、「全体が包括的な一の役務の提供」(サービス)と考えますので、全体が「役務の提供」と判断されます。よって、「役務の提供」は、軽減対象資産の譲渡等に該当せず、標準税率となります。なお、用途は税率の判定に影響しません。

事例問題7)
・食材の加工賃は、軽減税率ですか?標準税率ですか?
・回答:標準税率です。
・解説:食品の販売ではなく、加工して報酬をもらうサービスと考えますので、「役務の提供」と考えます。よって、「役務の提供」は、軽減対象資産の譲渡等に該当せず、標準税率となります。なお、用途は税率の判定に影響しません。

事例問題8)
・都会のオフィス街のランチ移動販売車でお弁当を売っています。移動販売車の目の前に、市立公園のテーブルとベンチがありますが、軽減税率ですか?標準税率ですか?
・回答:軽減税率です。
・解説:公園のテーブルをこの業者さんが市役所から許可をもらって占有しているというわけではないので、この業者さんの「飲食設備」には該当しないと考えて良いでしょう。よって、単に「持ち帰りのための容器に入れ、もしくは、包装を施して行う飲食料品の譲渡」(テイクアウトのお弁当)として扱いますので、軽減対象資産の譲渡等に該当し、軽減税率となります。



ここから、さらに難解になりますよ〜!!
事例問題9)
・ティーカップ(製造原価50円分)と紅茶(販売原価250円分)をギフト用に梱包して、「紅茶セット」として千円(税抜き)で販売しましたが、軽減税率ですか?標準税率ですか?なお、容積(大きさ)の比はカップ:紅茶=1:1です。
・回答:全体が軽減税率となります
・解説:「食品」と「食品以外」の資産があらかじめ一の資産を形成・構成し、一の資産の価格としての価格のみが提示されているものを一体資産として取り扱います。この場合、ギフト用としてあらかじめ梱包された状態ですので、お客様は組み合わせを変えたりできません。また、全体が千円であるとして1つの値段が付されています。よって、一体資産に該当します。
 そして、「一体資産」と認められたもののうち、一体資産の一の対価の額(税抜き)が1万円以下であり、かつ、全体に占める食品の割合が三分の2以上である場合は、全体を軽減対象資産の譲渡等として扱って良いという特例があります。この場合、左記の2要件を満たしていますので、全体が軽減税率の対象となります。
 なお、上記ティーカップが単体で購入可能であったり、ティーカップを別のものと選択可能であったりした場合は、「一体資産」ではないので、一の資産の金額(千円)を税率毎に案分(カップと紅茶の原価の比で分ける)する必要が出てきますので、留意ください。
 また、食品の占める割合はあくまで「原価」または「売価」の金額ベースで決めます。容積、大きさ、面積、重量、人気など金額以外のデータで判定しませんので、頭の片隅に入れておいてくださいね。

   事例問題10)*さいごは、解説(考え方のアプローチ)が激ムズです。
・パティシエが、誕生日用ケーキ1ホールを持ち帰り用に3千円で販売しました。このとき、購入した家族連れに誕生日を迎えるという子供がいるのに気づき、パティシエの気まぐれで、おもちゃを無料でプレゼントしました。このおもちゃは、コレクターによるとメルカリやオフハウスなどの中古品店などで数百円で通常売買されているものであるとの情報があります。パティシエは、趣味では無く、あくまで販促ツールとして、このおもちゃを正規ルートで仕入れていますが、おもちゃを単体では売らず(非売品)、あくまでパティシエの気が向いたら相手を見てタダであげるために臨時に仕入れている様子です。さて、軽減税率ですか?標準税率ですか?なお、大きさは、おもちゃ:ケーキ=1:1です。
・回答:結果的に全体が軽減税率となります(難!)
・解説:「食品」と「食品以外」の資産があらかじめ一の資産を形成・構成し、一の資産の価格としての価格のみが提示されているものを一体資産として取り扱います。この場合、元々気まぐれでおもちゃを付けたり付けなかったりすることから、「一体資産」には該当しないものと解されるかと思います。よって、1万円判定や食品の割合などは関係なく、一体資産の特例の適用除外となります。
 このような場合、「一括譲渡」と言って、「一体資産」ではないので、一の資産の金額(3千円)を税率毎に案分(ケーキとおもちゃの売価か原価の比で分ける)する必要が出てきます。ここで、おもちゃの値段は非売品のため、ゼロ円と考えます。時価が数百円とありますが、消費税法では時価は無視します。よって、案分したとしても、全体がケーキの金額となりますので、結果として、全体が軽減税率となると解されます。
 
 善意のおもちゃの無料プレゼントひとつに、消費税的な壮絶なドラマがあるのですっ!!

   いかがでしょうか? 消費税法は税法の中でも群を抜いて難しいですよね? まだまだミスしそうな内容はたくさんあるのですが、お腹いっぱいではないかと思いますので、このぐらいにしておきましょう!
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★まとめ:軽減税率か標準税率か、かなり細かい規定とロジックがあります。一緒に研究しましょうね。
 
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2021年5月24日