消費税の課税区分がわからないのですが?問題形式で解説します。(2)//FP




  【問題2】
私は、個人事業者B(居住者)です(問題1に登場!)。開店前から行列のできる街のパン屋さんです!
(1)普段は店内のレジを利用して、購入頂いたパン、菓子類を売り上げています。イートインスペースはなく、全てテイクアウト用です。
先日、コロナ感染対策で店頭販売することとしたため、レジを利用できないことから、直接的な売上高の把握もできていません。やむなく、「開店前後の現金の有り高」から、売上げを逆算して推定しています。
(2)パンの食材(強力粉、ベーキングパウダー、食品添加物、食品防腐剤)を卸売り業者から購入しました。「ベーキングパウダー イコール 重曹(炭酸水素ナトリウム)」だし、ビタミンCなどの「食品添加物・食品防腐剤」も、標準税率となる「医薬品」になにやら似てるけど、課税区分はどうなるのかな〜?
(3)菓子類の風味付けのために添加物として購入した「菓子製造用ブランデー」は?
(4)機会損失を避けるため、毎日多めにパンを製造している関係で、ある程度の数のパンの売れ残りが出ます。フードロスの見地から、もったいないので自宅に持ち帰り、家族のための翌朝の朝ごはんにしています。
(5)パン製造器(焼き釜)を機械製造業の法人A(問題1に登場!)より購入した。

【問題2の答え】
(1)課税売上げ、軽減税率(*帳簿及び請求書の有無関係なし)
(2)仕入税額控除できます。課のみ対応、軽減税率の対象です。
(3)仕入税額控除できます。課のみ対応、標準税率の対象です。
(4)課税売上げ、軽減税率(原価または売価の50%のいずれか大きい金額)
(5)仕入税額控除できます。課のみ対応、標準税率の対象です。

【問題2のポイント解説】
(1)パン、菓子類は、消費税法上の「食品」に該当し、軽減対象資産の譲渡等であるため、軽減税率の対象となります。
「課税仕入れ」を仕入税額控除するには、原則として帳簿及び請求書等の保存を要しますが、「課税売上げ」の認識には帳簿又は請求書等の保存は不要となっております。もちろん、「課税売上げ」の金額の把握と計上は抜けなく行わなければなりません。方法と保存は任意というだけの事です。
(2)「食品添加物」も含めて消費税法上の「食品」として区分されます。よって、 軽減対象資産の譲渡等であるため、軽減税率の対象となります。
(3)菓子製造目的の購入であっても、ブランデーは酒税法に規定する「酒類」とされ、消費税法上「食品」から除かれます。よって、軽減対象資産の譲渡等とならないため、標準税率の対象となります。
(4)消費税法上の「みなし譲渡」といって、他者に売ったのと同じとみなして課税の対象とされてしまします。
ちなみにですが、「みなし譲渡」の計上漏れの指摘・実例の話はあまり聞かないのが実情です。こちらのパン屋さんや、他にも、農業、漁業のように管理会計(製造個数と販売個数の推移の把握など)が適用しにくい産業では、税務調査があったとしても指摘されにくい部分かとは思います。小さい話であり、巨額の不正ではないことから、税務署も小さいところまでは目が行き届かない部分もあるためかと考えられます。ただ、だからといって故意に悪用しすぎると、いわゆるマルサ(査察部)に重点的にチェックされたり、国税庁が締め付けのために法令を狙い打ちで改訂されたりする原因になります。不正の事例と改訂の根拠として、マスコミに報道されかねませんので、やりすぎには気をつけて下さいね。
(5)機械は、食品の製造のため(課のみ)の購入ではありますが、機械自体は「食品」そのものではありませんので、軽減対象資産の譲渡等とならないことから、標準税率の対象となります。



  【問題3】
当社は、不動産業・ホテル業・飲食店業を営む内国法人Dです。
(1)国内のマンションの1室を「民泊」として、外国人Eに貸し出しました。
(2)外資の通信事業者である外国法人Fが(1)のマンションの屋上に無線通信基地局のアンテナを設置したいとの事で、マンション屋上の一部について「賃貸借契約」を締結し、貸付けを開始しました。
(3)ホテル内のレストランのレジにて、お土産用の特製ケーキを数量限定販売しました。旅行雑誌で取り上げられる有名なパティシエによるホテルの名物となっており、同種の一般的なケーキの2倍の値段がするものです。
(4)1泊2食付きディナーショー(*落語家のサインを焼き印したお煎餅の手土産付き)の売上げは?
(5)ホテルのフロントで販売した「新聞」の売上げは?

【問題3の答え】
(1)課税売上げ、標準税率
(2)課税売上げ、標準税率
(3)課税売上げ、軽減税率
(4)課税売上げ、標準税率
(5)課税売上げ、標準税率

【問題3のポイント解説】
(1)「住宅の貸付け」ではないため、「非課税取引」には該当しません。また、相手が「外国人=非居住者」であっても、「非居住者に対する役務の提供のうち、国内において直接便益を享受するもの」であるため、「輸出免税取引(0%課税)」とはならず、「課税売上げ(標準税率)」となります。
(2)マンションの屋上は土地そのものではありませんので、「土地の貸付け」には該当せず、「非課税取引」とはなりません。その他は、上記(1)と同じ考え方です。
(3)レストランでの飲食やイートインなど、飲食のための設備(テーブルまたはイスなど)がある場所での「役務の提供」は「標準税率」となります。ただし、本件の場合、テイクアウトですので、「役務の提供」とは考えませんので、「飲食料品の譲渡」として、軽減税率の対象となります。なお、市場や相場からみて高すぎたり・低すぎたりしても、消費税的には、調整などはありません。
(4)お煎餅を配布していますが、ディナーショーに付随し、区分できないため、全体を「役務の提供」と考えます。よって、「飲食料品の譲渡」には該当せず、標準税率となります。
(5)定期購読の新聞ではないため、軽減税率の対象とはなりません。


★まとめ
 
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2021年5月24日