消費税の課税区分がわからないのですが?問題形式で解説します。//FP


消費税の「課税区分」は難しいですよね。
2019年(令和元年)10月1日から軽減税率制度も導入され、さらに複雑なものとなりました。
しかし、わからないと仕訳の一本も切る事ができません。
また、知識があいまいのため、課税区分ミスをすると月次監査や決算の際に税理士から指摘を受けたりします。
その課税区分ミスを税理士が見逃せば、半年後に税務調査の指摘事項にもなりかねません。
仕入税額控除できるのに計上しないと消費税的に不利な取り扱いとなりますし(この場合は税務署は気づいていても一切教えてくれません)、仕入税額控除できないのに計上すると修正申告などの対象になり得ます(この場合は税務署から厳しく指摘され、消費税及び地方消費税について予定外の増額となり、資金繰りや経営に悪影響を及ぼしかねません。)。
よって、消費税の課税区分は難しいのですが、経営者や経理担当として、簿記2級のスキル同様に必須のスキルとなります。

さて、消費税の課税区分に関する「法令」・「要件」については、他所のサイトや国税庁のサイトでも多数記載があります。
参考)国税庁ホームページ「消費税」について
ただ、これらでは、具体的な事例に触れることがあまりできないのが現状です。

よって、当サイトでは、事例対応逆引き事典の趣旨により、「問題形式」として紹介させて頂くことと致しました!
消費税の「課税区分」に関する問題を出題させて頂き、都度解説していきたいと思います。
心の準備は良いですか?
出題の順番と難易度・レベルはあえて順不同としておりますので、実務に近い感覚を味わって頂ければと思います。


【問題1】
当社は、機械製造業の法人A(本社は国内に所在)です。
(1)法人Aは、国内の食品製造業である個人事業者Bを相手に、パン製造用オーブン(焼き釜)を製造して販売しました。なお、個人事業者Bは「軽減税率」の対象となる「飲食料品」となるテイクアウトのパン・菓子類を毎日製造・販売する、いわゆる街のパン屋さんで、この焼き釜のみを利用してパン・菓子類を製造するとのことでした。
(2)上記(1)の製造のため、法人Aは、国内の「免税事業者」である下請の個人事業者C(一人親方の金属加工職人)から、今回の受注製造に必要な特注の機械部品を調達しました。当社は、個人事業者Cから「区分記載請求書」の発行を受けており、既に銀行振込み済みです。BtoBの取引なので、Cからの要望により、領収書発行は省略されました(印紙代をケチりたい+発行がめんどくさいから)。
(3)上記(1)の製造の際に、工場の夜勤作業員にまかないとして、コンビニで購入したお弁当を差し入れました。イートインで食べる意思についてはきかれなかったので、持参したマイバックに入れて、工場に持ち帰りました。コンビニでの領収証があり、購買してきた工場の製造係長は、経理課に領収書を渡して清算してもらいました。
(4)上記(1)の納品立会いのため、営業マンが「公共交通機関」を利用しました。ただし、交通機関が発行した「領収証」などはありません。日付・区間・金額などを記載した「月次交通費精算書」というA社独自のエクセルファイルの帳票に、その営業マンが入力したデータだけがある状況です。経理担当者は、領収書がないので、税務調査で指摘されないか不安に思っています。
(5)上記(1)の検収の際の手土産品(御礼・リベート代わり)として、営業マンが「JCBギフトカード・全国デパート利用券」を立て替えで購入し、個人事業者Bに渡しました。レシートは経理部に渡してあります。

【問題1の答え】
(1)課税売上げ、標準税率
(2)仕入税額控除できる、課のみ対応、標準税率
(3)仕入税額控除できる、課のみ対応、軽減税率
(4)仕入税額控除できる、課のみ対応、標準税率
(5)仕入税額控除できません。

【問題1のポイント解説】
(1)軽減税率となる取引は「飲食料品の譲渡」そのものが対象です。法人Aは「機械」を譲渡したのであって、個人事業者Bがどのような用途に利用しようと関係しません。よって、飲食料品の譲渡に該当せず、標準税率となります。
(2)相手方が免税事業者であっても、「区分記載請求書方式」においては、「課税仕入れ」の定義上「他の者」となり、かつ、個人事業者Cとしては課税売上げをしたことから、課税仕入れに該当し、仕入れ税額控除することができます。
なお、令和5年に「適格請求書等保存方式」としていわゆる「インボイス方式」の導入が予定されておりますが、これによると免税事業者はその後インボイスを発行できなくなります。販売先に仕入税額控除してもらうためには、あえて自分が課税事業者を選択するなどの事前のアクションが必要かと思われます。令和5年までに売る側も仕入れる側も消費税の知識のさらなる深い理解が必要になりますね。
ところで、「領収書はない」とありますが、「請求書の保存はある」ので問題ありません。
(3)コンビニにとって、飲食料品の譲渡となるため、軽減対象資産の譲渡等として、軽減税率の対象となります。夜勤は上記(1)のためのものなので、「課のみ」と判断して問題ないでしょう。なお、役員が会議室で仕出し弁当を広げて経営会議した場合は、共通対応・軽減税率の仕入税額控除となりますよ。
ややこしいですね(^^;)
(4)消費税法上、原則課税・一般課税(簡易課税ではない方式)で仕入税額控除する場合には、「帳簿及び請求書」の保存が原則として義務づけられております。ただし、請求書等の保存を要しない特例措置もあります。「課税仕入れに係る支払い対価の額の合計額が3万円未満であるとき」、「3万円以上の場合で請求書の交付を受けることができなかった事につきやむを得ない理由があるとき」などは、請求書等の保存が無くとも、仕入税額控除が認められます。交通機関への支払いはこれにあたるので、請求書等がなくとも、仕入税額控除できることになります。
(5)「物品切手等」の購入ですので、「非課税取引」ですから、「課税仕入れ」に該当しないため、仕入税額控除することができません。
ちなみにですが、「課税仕入れ」に該当するものでも仕入税額控除できないものが、近年制定されてきております。例えば、金・白金などの密輸品、居住用賃貸住宅の購入などが挙げられます。「課税仕入れ イコール 引ける」と覚えるととんでもない修正申告が待っているかもしれません。私と一緒に学びましょう!

さて、いかがでしょう?消費税の課税区分がわからないのですが?については、
まだ続きがあります。さらに問題形式で出題し、都度解説します。>>


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2021年5月24日